亜鉛とは
亜鉛は、体内に約2,000mg存在し、主に骨格筋、骨、皮膚、肝臓、脳、腎臓などに分布されます。亜鉛の生理機能は、たんぱく質との結合により発揮され、触媒作用と構造の維持作用に分けられます。
~日本人の亜鉛推奨量とは~
2020年度版の食事摂取基準では年齢や性別に合わせて亜鉛の推奨量が定められています。
男性 11.0mg
女性 8.0mg
~日本人の亜鉛充足率~
2019年度版の国民健康・栄養調査の結果では、亜鉛の一般食品からの摂取量は、男性9.2mg、女性7.7mgという数値が出ています。
特に男性で推奨量に届かず、不足している状況です。
その理由の1つに、偏った食事や極端なダイエットが挙げられます。
亜鉛は肉類や魚介類などに多く含まれています。そのため、肉類や魚介類を食べないベジタリアン、ビーガンなどは不足しやすいミネラルと言われています。
亜鉛の摂取量不足だけでなく、亜鉛の吸収を阻害する食品添加物(ポリリン酸など)を含む加工食品やレトルト食品を多く利用することも、亜鉛不足を招きます。
~不足~
亜鉛が不足すると、皮膚炎や味覚障害、慢性下痢、免疫機能障害、成長遅延、性腺発育障害などを引き起こします。
~過剰症~
亜鉛の過剰症には、銅の吸収阻害による銅欠乏、吐き気、腎障害、免疫障害、上腹部痛、消化管過敏症、HDLコレステロールの低下、低銅血症、下痢などが挙げられます。
耐容上限量は男性40mg、女性35mgとなっています。日常の食事で耐容上限量を上回ることは少ないとされていますが、サプリメントなどを摂取されている場合には摂り過ぎに注意が必要です。
~亜鉛の多い食品(100g当たりで多いもの)~
牡蠣(燻製油漬缶詰):25.4mg
小麦胚芽:15.9mg
牡蠣(養殖・生):13.2mg
ビーフジャーキー:8.8mg
まさば(さば節):8.4mg
かたくちいわし(田作り):7.9mg
かぼちゃ(いり・味付け):7.7mg
ナチュラルチーズ(パルメザン):7.3mg
かたくちいわし(煮干し):7.2mg
豚レバー(生):6.9mg
まいたけ(乾):6.9mg
たたみいわし:6.6mg
牛肉(肩ロース):6.4mg
~1食あたりで亜鉛が多いもの~
牡蠣(80g):11.6mg
豚レバー(40g):2.8mg
牛肩赤身肉(100g):5.5mg
牛もも肉(100g):4.1mg
豚ヒレ肉(100g):2.2mg
鶏もも肉・皮なし(100g):1.8mg
高野豆腐・乾(20g):1.0mg
納豆(50g):1.0mg
~亜鉛摂取時の注意~
亜鉛の吸収率を高める栄養素
①動物性たんぱく質
動物性タンパク質を一緒に摂取することで亜鉛の吸収が促進されるとされています。また、動物性タンパク質は、フィチン酸や食物繊維といった亜鉛の吸収を阻害する物質の影響も減らす働きもあります。この為、亜鉛は肉類や魚介類から摂取するようにするのが、言いとされています。
②クエン酸・ビタミンC
クエン酸と一緒に摂取すると、キレート作用によって亜鉛の吸収が促されます。キレート作用は、亜鉛などのミネラルを、フィチン酸などが結合する前に包み込んで吸収しやすくする効果があります。クエン酸と同様に、ビタミンCもキレート作用があるので、一緒に取れば亜鉛の吸収率が上がるとされています。
亜鉛の吸収率を下げる栄養素
①フィチン酸
穀物・豆類が原料の製品やインスタント食品に多く含まれています。フィチン酸は、カルシウム・マグネシウム・亜鉛などのミネラルとの結合力が強いため、体内への吸収を低下させます。
②ポリリン酸
スナック菓子やインスタント食品などに含まれる添加物です。「ポリリン酸カリウム」や「ポリリン酸ナトリウム」などの形で使われることが多く、他のリン酸塩類と併用して様々な食品に使われる「リン酸ナトリウム」と称されていることもあります。主に亜鉛を体内から排出する作用があります。
③食物繊維
食物繊維にはミネラルを吸着する性質があるため、鉄・銅・亜鉛の吸収を妨げます。
食物繊維は、穀類や藻類などに多く含まれています。普段の食事から過剰摂取となることは少ないですが、健康食品やサプリなどからの過剰摂取で亜鉛不足に注意しましょう。
④タンニン
コーヒー・紅茶・緑茶などに含まれる渋みを感じさせる成分です。亜鉛の吸収を阻害する働きがあるため、食後にコーヒーを飲む習慣は亜鉛の吸収を妨げます。
⑤シュウ酸
なすやほうれん草などの野菜・チョコレート・コーヒー・紅茶・ナッツなどに多く含まれている成分です。シュウ酸はカルシウムと結合してシュウ酸カルシウム(腎臓結石)をつくります。
⑥カルシウム
カルシウムも健康にはとても大切な栄養ですが、過剰摂取によって亜鉛の吸収を妨げます。
~亜鉛の多いメニュー~
①牡蠣のレモンバターソテー
あらゆる食材の中で最も亜鉛量が多い牡蠣料理です。レモンに含まれるクエン酸やビタミンCと、バターの主成分である動物性タンパク質は、亜鉛の吸収率を高める作用があります。
【材料】(2人前)
牡蠣:1パック
片栗粉:適量
バター:大さじ1
醤油:大さじ1
レモン:適量
【作り方】
(1)牡蠣を軽く塩もみし、一度洗い流し、水分を取り除く。
(2)牡蠣に片栗粉を適量まぶす
(3)フライパンにバターを入れて加熱し、バターが溶けはじめたら牡蠣を入れる。
(4)中火で約5分加熱したら醤油を垂らす。
(5)火を止めてレモンを絞って軽く掻き混ぜて完成。
②ブロッコリーのビーフジャーキー炒め
亜鉛含有量が多いビーフジャーキーに動物性タンパク質が含まれており、亜鉛の吸収率が高くなります。
【材料】(4人前)
ブロッコリー:1房
ビーフジャーキー:適量
バター:15g
塩:少々
【作り方】
(1)ビーフジャーキーの塊をミキサーで粉々にする。
(2)ブロッコリーを軽く下茹でする。
(3)フライパンにバターを入れ、バターが溶けはじめたら(2)を入れる。
(4)フライパンに(1)を入れて炒め、軽く塩を振って完成。
③チンジャオロース
肉類の中では亜鉛含有量が多い牛肉にピーマンを加えた料理です。ピーマンには亜鉛の吸収率を高める作用があるビタミンCが豊富に含まれており、牛肉も動物性タンパク質なので、亜鉛の吸収率を高める作用があります。
【材料】(2人前)
牛肉:200g~300g
ピーマン:3~4個
水煮細切りたけのこ:1パック
しょうゆ、酒、片栗粉:各小さじ1
オイスターソース、酒、みりん:各大さじ1
しょうゆ:小さじ1
砂糖:小さじ1
ごま油、塩コショウ:各適量
【作り方】
(1)牛肉を細切りやこま切れに切りボールに入れ、しょうゆ、酒で下味をつける。
(2) (1)に片栗粉を入れて、揉みこんで10分ほど寝かす。
(3)ピーマンの種を取り、細切りにする。
(4)水煮細切りたけのこは軽く湯通しする。
(5)フライパンにごま油を熱し、ピーマンとタケノコを中火で炒める。
(6) (5)に軽く塩コショウし、一旦取り出す。
(7)フライパンにごま油を足し、(2)をフライパンへ入れる。
(8) (2)をある程度平らにしたら、中火のまま牛肉の下半分が白くなるまで待ち、しっかり焼き目をつける。
(9)焼き目がついたらひっくり返してほぐし、(5)を入れて炒める。
(10)オイスターソース、酒、みりん、しょうゆ、砂糖を入れ、強火で一気に炒て完成。
コメント