ベストパフォーマンスには睡眠が必須！
バスケットボール選手における睡眠とパフォーマンスの関係
トップアスリートのインタビューを聞いていると、彼らの睡眠時間が長いと感じたことはないだろうか？例えば、NBA選手のレブロン・ジェームズは1日平均12時間睡眠を取っているとインタビューで答えています。他にも、プロテニスプレーヤーのロジャー・フェデラーは約11時間、元陸上選手のウサイン・ボルトは1日10時間の睡眠を取っていると話しています
では、実際に睡眠時間が長いとスポーツのパフォーマンスは向上するのでしょうか？
今回は、この疑問について、スタンフォード大学の研究チームが2011年に発表した論文がその効果を報告しているので紹介します。
研究の目的
本研究の目的は、数週間、睡眠時間を伸ばすことによって、スポーツのパフォーマンスや反応時間、心理状態、日中の眠気に与える影響について明らかにすることとした。
方法
対象者
健康な11人のスタンフォード大学男子バスケットボール部選手を対象
実験内容
被験者は最初の２−４週間は通常の睡眠と起床の習慣を維持して、５−7週間は睡眠時間を伸ばした。睡眠時間を伸ばした期間中、被験者は10時間の睡眠時間を確保出来るように、夜間睡眠を出来るだけ取るようにした。バスケットボールのパフォーマンスを測るために、毎回の練習後にスプリントのタイムとシュートの正確性を記録した。反応時間、日中の眠気、心理状態はPsychomotor Vigilance Task （PVT）とEpworth Sleepiness Scale （ESS）とProfile of Mood States （POMS）によって測定された。
パフォーマンス測定として、フリースローは毎回練習後に10本、スリーポイントシュートは15本打って、その成功率を記録している。スプリントの距離は282フィート（約85メートル）で、こちらもシュート同様に毎回記録した。シュートの確率は平均で1本増加して、スプリントは0.7秒速くなった。
結果
結果として、被験者の夜間時の総睡眠時間はコントロール群と比べて増加して、睡眠時間延長期間においてスプリントのタイムも速くなり、フリースローの確率は9パーセント向上し、スリーポイントシュートの確率は9.2パーセント向上した。POMSのスコアでは、活力に関する点数が向上し疲労に関する点数が低下した。加えて、被験者の内政報告では練習・試合時の心身の健康状態が良好であったことが報告されていた。
この研究結果から、最適な睡眠はパフォーマンス発揮において重要であることが示唆された。
研究から言えること
研究の限界・補足事項
この研究は大学バスケットボールのシーズン中に行われ、遠征先でも実験プロトコルに従って睡眠時間を記録している。睡眠時間延長期間にあった遠征時に10時間寝られなかった場合は、昼寝で補うようにしている。
早川の目
スポーツのパフォーマンスをバスケットボールに限定した内容であったものの、約2週間睡眠時間を10時間近く取ることでシュートの確率が上がり、スプリントのタイムも上がった。質問紙を通してではあるが、心身の健康状態も良くなったと報告していることから、十分な睡眠によって心身の疲労が回復した結果だと考えられる。
また、実際のシーズン中に行われた研究であることも注目すべき点である。アメリカのバスケットボールチームは、シーズン中に何度も遠征があり時差をまたぐ程の長距離移動もあれば、数時間のバス移動も頻繁にある。このような過酷な移動が多くある中でもPOMSで測定した疲労のスコアが下がり、選手からも心身の健康状態の良さが報告されている。このことからも、いかに長時間の睡眠が心身の疲労やストレスを軽減させているかが分かる。
いいパフォーマンスを発揮する際には、十分な睡眠時間が確保できるような練習の組み方やスケジューリングが必要だと思わせてくれる知見である。特に育成年代は睡眠によって体の成長が促進されるので、あまり夜遅くまで頑張りすぎずきちんと睡眠を取ることの方が心身に与えられる恩恵は大きいと考えられる。
今回紹介した論文
Mah CD, Mah KE, Kezirian EJ, Dement WC. The effects of sleep extension on the athletic performance of collegiate basketball players. Sleep. 2011 Jul 1;34(7):943-50. doi: 10.5665/SLEEP.1132. PMID: 21731144; PMCID: PMC3119836.
コメント